さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

ビレ・アウグスト

現在、東京で、デンマークビレ・アウグスト監督の映画『マンデラの名もなき看守』を上映しているようです。好きな監督なので、わたしは見れずに残念ですが、もしご覧になった方がいらしたら、(ネタバレなしで)感想をよろしくお願いします。ダイアン・クルーガー(『トロイ』でヘレネーを演じた人。わたしは、『敬愛なるベートーヴェン』でファンになりました)も出ていて、期待大です。下に、Yahooのサイトと、映画の公式サイト(2番目は日本語、3番目は英・独・仏語)をリンクします。




と言うわけで、今日は、ビレ・アウグスト監督と、その作品をいくつか、ご紹介したいと思います。

ビレ・アウグストは、1948年、デンマークのブレーデ生まれ。1988年に『ペレ』で、1992年に『愛の風景』で、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞しています。最初はデンマーク語やスウェーデン語で撮っていたのですが、近年はハリウッドに進出しています。以下は、わたしが見たことのある3作品です。

『ペレ』(1988年)
原作は、デンマークプロレタリア文学の代表作『勝利者ペレ』で、19世紀後半から20世紀にかけて、盛んに行われたアメリカ移民を背景にしています(どのくらい盛んだったかというと、1910年の時点で、スウェーデン人の5分の1がアメリカに住んでいました)。
映画は、スウェーデン人の小作農と10歳の息子(年取ってからの子どもなので、孫くらいに見える)が、より良い暮らしを求めて、デンマークの大農場に移民する場面から始まります。しかし、そこで待っていたのは、スウェーデンとほとんど変わらない、貧しく、虐げられた暮らしでした。息子は、アメリカで成功した人の話を聞いて、自分たちもアメリカに再移民しよう、と父親に言うのですが、父親は、もう自分は年だし、農場でいい人も見つけたし、どこに行っても貧しい暮らしが変わるとは思わない、と拒みます。これまで、衛星放送で何度か放送してるので、気長に待てば、またやるかもしれません。
父親役の、マックス・フォン・シドウは、ベルイマンの映画で名を馳せた名優で、この演技でアカデミー賞にノミネートされました。



エルサレム』(1996年)
原作は、わたしが現在博士論文で扱っている作品で、スウェーデンの農民が、宗教上の理由から、エルサレムに集団移住するという、実際にあった出来事を題材にしています。エルサレムでの暮らしのことなどは、原作よりも映画の方が史実に近いようです。
原作は、岩波文庫上下巻であわせて1000ページ近いので、映画はかなり削ってあって、専門家としては不満が残りますが(わたしの好きなキャラが3人もいなくなってたし、重要な場面もカット。その場面がカットされると、わたしの博論も崩壊)、時間の制約がある中では、取るところは取って、非常に見ごたえのある映画になっています。ラストシーンは、原作とだいぶ違いましたが、これはこれでありだなと思いました。あと、厳寒のスウェーデンと灼熱のエルサレム、という映像の対比はすばらしく、主人公の結婚式の場面は、わたしの中で「映画の結婚式ベストスリー」にランクインしています。
この映画にも、マックス・フォン・シドウがチョイ役で出ています。



レ・ミゼラブル』(1998年)
これは、ハリウッド進出後の作品です。ジャン・バルジャンリーアム・ニーソン(『シンドラーのリスト』のシンドラーの人)が、ファンティーヌをユマ・サーマン(『キル・ビル』のザ・ブライドの人)が、コゼットをクレア・デインズ(『若草物語』のベスとか、『ロミオとジュリエット』のジュリエットの人)が、ジャベールさんをジェフリー・ラッシュ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』のキャプテン・バルボッサの人)が演じていて、どの俳優も好きなので、すごく良かったです。
これも、長い話を無理にまとめているので、名作のダイジェスト版みたいな感じはちょっとしますが(あと、わたし的にはマリウス君がイマイチ)、ジャン・バルジャンがファンティーヌと一緒にご飯を食べるシーン(原作にはありませんが)が好きでした。
ちなみに、わたしは、これがきっかけで原作を読み始めました。留学で中断してしまったので、帰国後再開する予定です。