今回の旅の目的地はルンド。スウェーデン南部スコーネ地方の町です。地図を見ていただけると分かりますが、スウェーデン南部はエーレスンド海峡をはさんでデンマークと向かい合っており、スコーネ地方は17世紀までデンマーク領でした。現在も強い方言「スコンスカ」をはじめとする独自の文化のある地域です。現在、このエーレスンド海峡には橋が架っています。
スウェーデンは、日本からの直通便がないので、6月はフィンランドのヘルシンキでトランジットしてストックホルムに行ったのですが、ルンドはコペンハーゲンからエーレンスンド大橋経由で37分。そこで、今回は成田空港からコペンハーゲン空港へ直通便で向かい、「エーレスンド列車」(デンマーク表記でØresundståg、スウェーデン語表記でÖresundståg)に乗ってルンドに向かうことにしました。
コペンハーゲンの券売機で操作をすると、アンデルセンの切り絵をあしらったきれいな切符が出てきました。切符をポケットに入れ、電車を待ちます。20分に一本の電車は、先端に丸くほっかむりをした独特のデザイン(スウェーデンでは「ゴリラ電車」と呼ばれているとかいないとか)です。電車はするすると橋を渡っていき、国境を越えました。堅固な橋で支柱が多くて見えにくかったものの、海も見えて満足でした。
ところが!スウェーデン側についたところで、切符がないことに気づきました。ポケットが浅く、おそらく駅で落としたのです。とりあえず周囲を探してきょろきょろしていると、「切符は車内で買えません」という掲示がありました。検札に来ると無賃乗車として扱われてしまいます。仕方なく、次の駅ヒュリーで降りました。
この駅はスウェーデン側になるため、電車を降りてホームに向かう際に、パスポートを見せる必要がありました。切符がないことをどう説明しよう、と困ったのですが、国境警備員には切符の提示は求められず、「スウェーデンには何日いますか?」「6日です」という会話だけでした。
審査をパスし、券売機に向かいます。普通に考えれば、ここからルンド行きの切符を買うのがベストなのですが、ここはもうスウェーデンなので、切符を買ってもデンマークの作家アンデルセンの切り絵は載っていません。帰りもこの電車には乗りますが、スウェーデンのルンドからなので、やはりアンデルセン切符は買えません。
自分でもあほかと思いつつ、コペンハーゲン空港駅に戻ることにしました。なくした切符はさすがに見つからないでしょうが、コペンハーゲンでなら、またあの切符が買えます。
コペンハーゲンに着き(たしかこちらではパスポートのチェックはなかったような?)、念のため、駅のホームで自分が歩いたところを見てみました。すると向こうの方に、ちょうど切符の大きさの紙が一枚落ちています。拾ってみると、なんとなんと!わたしが落とした切符でした。…もちろん名前は書いてありませんが、行先と購入した時間を見るとほぼ間違いありません。落としてから一時間近くたっているのに、ちゃんとそのままそこに残っていることにびっくりしました。
今度は切符をリュックのポケットに入れて、エーレスンド電車に乗ります。一度目は気づかなかったのですが、海峡の途中に国境があり、橋に「←デンマーク|スウェーデン→」の表記がありました。一瞬で通り過ぎてしまい、写真は撮れませんでした。
ヒュリーの駅は、降りる場合は電車の出口でパスポートを見せますが、そのまま乗っていく人は電車の中でパスポート審査があります。電車はしばらく停車。国境警備員が順々に乗客のところに回っていくのですが、わたしのところに来たのはさっきと同じ警備員でした。その警備員さん、一瞬「あれ?」って顔をしたのですが、特に突っ込まれず、「スウェーデンには何日いますか?」「6日です」という会話を繰り返し、しばらくして電車は動き出しました。
ルンド駅に着き(駅の出口にはErnst Josephsonsの絵画「ネッケン」(Näcken, 1882-1884)がありました。魂がないことを嘆き、悲しいヴァイオリンを奏でる水の精です)、フリーWi-Fiを設定して(今回は日本でWi-Fiルーターをレンタルしなかったので)、ホテルに向かいます。
駅に着くまでかなり波乱万丈、この後もいろいろあった旅の幕開けです。