さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

ナイチンゲール

こちらは、わたしが初めて撮影に成功したナイチンゲールです。撮影に成功…といっても、手前の枝にピントが合ってしまい、鳥はボケています。

なぜそんな写真から始めるかというと、今週はナイチンゲールな一週間だったからです。

6月2日に、この写真が本当にナイチンゲールか確かめようと検索していた時、『ナイチンゲール』という映画(ジェニファー・ケント監督)の存在を知りました。

見てないのに紹介するのは無責任かもですが、ポスターと「私は、あなたのものではない」というキャッチコピーがすごく気に入りました。

映画「ナイチンゲール」公式サイト|3月20日(金)ロードショー (transformer.co.jp)

 

6月3日は、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞したオーストラリアの「先住民文学基金」(Indigenous Literature Foundation)の代表を招いたパネルディスカッションがありました。テーマは「言葉に対する子どもの権利」。

賞の概要はこちら。
Astrid Lindgren Memorial Award (alma.se)

前から気になっていたすてきな建物。建物名は「コンサートと会議(Konsert och Kongress)」です。

なぜこれがナイチンゲールと関係があるかというと、司会を務めたスウェーデン人作家アンネ=マリー・シェルリング(Anne-Marie Körling)さんが、話の導入でリンドグレーン『ボダイジュがかなでるとき』に言及され、タイトルともなっている重要な詩句「わたしのボダイジュはかなでている?わたしのナイチンゲールは歌っている?」を述べ、これをほかの皆さんと一緒に唱和する機会に恵まれたからです。同作については、個人ウェブサイトの紹介をご覧ください。↓

リンドグレーン「ボダイジュがかなでるとき」(中丸禎子のページ・本の紹介) (biglobe.ne.jp)

帰りがけ、たまたま出口付近にシェルリングさんがいらっしゃり、「ありがとうございました。楽しかったです」と話しかけたところ、向こうもわたしのことを聞いてくれたので、外に出るまでの2分くらいでしたが、日本人でスウェーデン文学を研究していること、そのきっかけになったのはリンドグレーンであること、『ボダイジュがかなでるとき』は一番好きな作品であることをお話しできました。同作がかなり昔に日本語に訳されたこともお伝えできました。

わたしはこのエピソードを、言葉が現実とは別の世界を見せる(悪く言えば言葉によって現実から逃れる)ものと受け取っていましたが、シェルリングさんは言葉の力を表すエピソードとして捉えており、また新しい読み方ができるように思いました。

 

6月4日は、ストックホルムのSöderbokhandeln(南書店)で、友達Sigrid Schottenius Cullhedの本『ピロメーラーの変貌』の出版記念パーティがありました。

なぜそれがナイチンゲールと関係あるかというと、この本で扱っているピロメーラーは、ナイチンゲールに返信したとされる人物だからです。オウィディウスの『変身物語』によれば、ピロメーラーは、姉の夫に襲われ、舌を切られて幽閉されます。それでも織物を使って姉に自分の身の上に起こったことを告げ、姉は夫に復讐するため、自分と夫の間に生まれた子どもを殺して夫に食べさせます。夫がそのことに気づき、武器を振り上げたところで三人ともナイチンゲールに変身する…という話です。わたしのスウェーデン語力のせいで、講演会の内容をすべて理解できたわけではないのですが、友達の本は、ピロメーラーが神話やその後の文学の中でどのように描かれてきたか、性暴力・沈黙・創作の在り方の源典としてピロメーラー神話を捉える、というものです。

実は今、この先どういう路線で文学研究をするか悩んでいて、この話を聞いて、「神話の受容と変貌」(文学用語では「アダプテーション」と言います)だったら行けるかもしれないなと思いました。

ナイチンゲールは、小さくて地味な鳥ですが、夕方にきれいな声で鳴きます。アプローチは全く違いますが、そのナイチンゲールを人を喜ばせるきれいな歌を歌う鳥ではなく、自己表現につなげていく三作品(いや、映画は見ていないので違うかもしれませんが)に続けてで会えたという意味で、今週はナイチンゲール週間でした。

メイン記事はここまでですが、今日は写真少なめなので、ストックホルムの写真を何枚か。

最寄り地下鉄

この道を進むと本屋さんがすぐ見えます。

隣りは帽子屋さん

帽子屋さんを通り過ぎ、地下鉄でストックホルム中央駅に向かいます。

ピッピだ!

 

【追記】記事「ウップサラの好きな場所」の「一番好きな居酒屋」外観に写真を追加しました。
ウップサラの好きな場所 - さかなのためいき、ねこのあしおと (hatenablog.com)