さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

クリスマス礼拝④ マリア教会

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一つくらいは、有名な教会に行ってみよう、と思って行ったのが、ずっと気になっていたけど行っていなかった、マリア教会でした。森鷗外の『舞姫』では、この教会の前で、豊太郎とエリスが出会います。ガイドブックにも載っている、大きい教会です。さすがに立派で、内部の装飾も見ごたえがあり、オルガンも見事でした。
ここは、25日にバッハのクリスマス・オラトリオが聞けるというので勇んで行ったのですが、押すな押すなの大盛況で、いい席が取れず、音響が悪かったのか、ただのものはやっぱりただなのか、正直、3時間聞くには、つらいものがありました。しかも、バッハの合間に、なぜかツェラーンの詩に前衛音楽風のメロディーをつけたものが流れ、微妙さを増していました。

パウル・ツェラーン(1920~1970)は、ユダヤルーマニア人で、ドイツ語を母語とする詩人です。両親は収容所で殺され、戦後、『死のフーガ』をはじめ、ホロコーストを題材にした詩を書き、最後は確か、セーヌ河に身投げしています。岩波文庫の『ドイツ名詩選』には、生野幸吉の対訳(これがまた、すばらしい!)つきで、上記の詩含め3編が載っています。実はわたしは、ツェラーンで卒論を書こうともくろんでいた時期があり、それ自体はあまりに散文的な自己を反省してやめたのですが、今でも好きな詩人です。が、わたしは音楽に関する趣味は基本保守なので(音楽に限らず、芸術全般そうでしょうか。ピカソは前衛か古典か?)、前衛音楽というものは、どうもいただけません。少なくとも、クリスマスの日に、豊太郎とエリスが会った教会で、バッハの合間に、ツェラーンの詩と一緒に聞きたくはありません。これが始まると聴衆もとたんにやる気がなくなり、果ては失笑さえ漏れていたのが、なんだか気の毒でした。