さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

2018年スウェーデン滞在記(7)6月20日 学会3日目

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長く感じた学会もいよいよ最終日。

余裕も出てきたので、カールスタッド市の中心部から大学に向かうバスの中から、車窓の風景を撮りました。中心部から大学までは直通のバスで10分、他のところにも停まるバスで20分くらいですが、夏休み(スウェーデンは6月6日から夏休みなのです!)中は直通バスは30分に一本です。初日はバスに乗っても降りても知らない人ばかりだったのに、さすがに顔なじみになっています。

最後の日の主なテーマは「翻訳」で、ラーゲルレーヴを色々な言語に訳している翻訳家や、ロシアでのラーゲルレーヴ受容などの話がありました。今回一番仲良くなったロシア人の発表もありました。

16時15分にすべてのプログラムが終了。この日は遠方に帰る人がたくさんいて、締めの挨拶などはなくバラバラと解散。1日目のわたしの発表で司会をしてくれたカールスタッド大学の先生とたまたま会って一緒にバスに乗り、中心部まで一緒に帰りました。

今回の学会の良かった点は、普段は会わない様々な分野の研究者や、俳優、演出家、翻訳者など普段は会わない職業の人がいて、自分が思いもよらなかった研究テーマや視点が沢山あることに気づかれたことでした。
もう一つ分かったのは、日本のアニメ『ニルスのふしぎな旅』の影響の大きさでした。スウェーデンではラーゲルレーヴの研究は生前にはあまりなされておらず、1960年代には作家としての任期も低迷した後、1980年代からまた研究が盛んになります。これは、ジェンダースタディの世界的な流行や、ラーゲルレーヴの著作権が切れて書簡や個人資料が公開されたことがきっかけとされますが、今回色々な人の話を聞いていて、アニメが多くの国で放映されたことも強いきっかけになったことが分かりました。もともとスウェーデン文学研究が盛んだったロシアでも、1980年代以降に『ニルス』を中心に、新しい翻訳が沢山出たようです。学会では、単にアニメが放映されたことを契機とする論調が強かったのですが、そこまで影響を持てたのは、作った人たちの志の高さと技術の確かさ、そして、それらが受け入れられる土壌=「世界の名作」ブームがあったはずです。こうしたアプローチは今後もっと示していく必要があると思いました。

問題だなと思ったのは、スウェーデン人、特に年配の人たちは配布資料もパワーポイントもなく話すので非ネイティヴには辛かったです。これは、この学会の課題であると同時に、自分が日本でなじんでいる発表スタイルは決して一般的ではないこと、言葉が充分に通じない人に対してプレゼンをする際には、さまざまな工夫が必要であることに気づくきっかけにもなりました。
同時に、それでもどうにか発表の概要が理解できたのは、スウェーデン人が話すスピードは、概してゆっくりだったからです。普段の話もそうですが、プレゼンの時は多くの人が普段よりゆっくり、はっきり話しているようでした。わたしは色々なことを言おうとして早口になってしまうことがよくあるので、この点は気を付けなければと思いました。

個々の発表の水準や、日本人研究者であるわたし自身の位置づけについては、正直「?」と思うところもありましたが、これは参加してみなければわからない。
良い点も悪い点もいろいろ発見できたという意味で、とても実り多い3日間でした。