リンネは、植物学者ですから、自宅のまわりも、森に囲まれています。もう9月で、花はほとんど枯れていたので、植物園はちょっと残念でしたが、この森は、すばらしかったです。苔の生した岩がごろん、ごろんとおいてあって、木が茂ってて、秋の初めで、雨が降って、肌寒くて、物悲しくて…ドイツ・ロマン派の流行語に、「森の孤独(Waldeinsamkeit)」という言葉があるのですが、ここを見てよくぞ名付けた、と思いました。
わたしは、いろんな無理を押し通してスウェーデン文学をやっているわけですから、もちろんスウェーデンは好きなのですが、一方で、研究者として、常に中立的にスウェーデンを見ようとしてきました。そのせいなのか、あるいは、見た目は暑苦しいけど、冷血漢だからなのか、これまで、景色を見て感激したことは多々ありましたが、「病み付き」になることはなかった気がします。
でも、この日だけはダメでした。「ああ、これは病み付きになるわ…」って思いました。1年半も外国にいると、さすがにお家が恋しかったのですが、この時ばかりは、「ああ、ずっとここにいたいなあ」としみじみ感じました。
スウェーデンの秋と冬が体験できないことが心残りだったのですが、3月にウップサラに来た時は、川に氷が浮いていたし、今年は秋の訪れが早く、今は例年の10月の雰囲気だそうです。ちょっぴり、得した気分です。