ルーン文字は、当初は純粋に記録用の文字だったのですが、北欧でローマ字が普及すると、占いなどに用途が限定されていきます。ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に、ブリュンヒルデという豪傑女王が登場しますが、同じ人物が「ブリュンヒルド」という名で、北欧神話にも登場します。この人物の身分については、いくつかパターンがあるのですが、『ニーベルンゲン』の元となった『ヴォルスンガ・サガ』などでは、「ルーンを読み解く巫女」という位置づけです。
先週の記事で、「ヴァルボルイは、オーディンが死んだ日」と書きましたが、正確に言うと、この日、オーディンは死んでいません。オーディンは、「ルーンを読み解く術」を得るために、死に近づかなければならなくて、グングニルという槍で自らを貫き、ユッグドラシル(世界樹、聖樹)という木で首をつって、九日九晩ぶら下がっていたそうです。それで、朦朧としていよいよ死にかけた時に、ルーンの秘密を悟ったそうで、神さまなのに、えらい苦労していますね。
こんな歴史や神話があるせいか、ドイツ語のRuneには、「神秘的な文字」の意味もありますし、ロマン派の作家ルートヴィヒ・ティークが『ルーン山』という小説を書いていますが、これなんかも、ルーン文字の神秘的なイメージから来ているのでしょう。