さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

ウルリッヒ・ミューエ

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わたしは知る人ぞ知る映画ファン。ファンと名乗れるほどは見ていないのですが、映画を見たらパンフレットを買って熟読するのが趣味なので、見た本数の割には詳しいです。ドイツに来てからは、留学中の身ということで我慢していたのですが(テレビもないし)、最近ついに我慢できなくなり、夏休み最後の日に、一日だけDVDを見ることにしました。話題になったドイツ映画は、日本でもドイツ語版で見れるので、日本では見れない、日本映画かハリウッド映画のドイツ語吹き替え版、ということで、悩みに悩んで決めたのが、日本で録画したにもかかわらず、結局見てなかった『スパイ・ゾルゲ』(篠田正浩監督、イアン・グレン本木雅弘主演)でした。

今回見るまで知らなかったのですが、この映画、日本でも非常に話題になった『善き人のためのソナタ』で主演し、今年7月に亡くなったウルリッヒ・ミューエが出ています。ドイツ語吹き替え版が出ているのは多分そのためで、写真はDVDのジャケットですが、なぜかゾルゲよりも、尾崎秀実よりも、ウルリッヒ・ミューエが目立っています。名前も真ん中に、一番大きく書いてあるし。ゾルゲにだまされる駐日ドイツ大使の役なのですが、ミューエの演技がすばらしいのと、だまされるくらいだからとっても良い人で、チョイ役のくせに妙に印象に残る人物でした。

DVDについていたキャスト紹介によると、ウルリッヒ・ミューエは、1953年生まれ。毛皮職人の息子で自分は大工だったのが、東ドイツ時代のライプツィヒで演劇を始め、ハイナー・ミュラーに発掘されて、舞台や映画で活躍したということでした。以前、大学院のゼミで、ラインハルト・イルグルという作家を読んだのですが、イルグルも、東ドイツでたしか電気工として働いていて、劇場の照明係をしていたことからミュラーに発掘された人物で、奇しくも、1953年生まれでした。

壁の崩壊から18年経って、今、ドイツでは、その時代を改めて考え直す作業が、少しずつ始まっています。数年前にやはり日本でもヒットした『グッバイ、レーニン』などはその典型ですし、流行ったかどうかは知りませんが、『ゾフィー・ショル』も、壁の崩壊によって新しく見つかった尋問調書を元に構成した映画でした。ミューエやイルグルなどは、わたしから見ると親の世代ですが、これからは多分わたしの世代が、子どもとして体験した壁の崩壊や統一をテーマにしたものを出し始めるはずで、どんなものが出てくるのか、楽しみにしています。