わたしは「北欧文学・ドイツ文学」という看板で研究をしています。最近は色々やりすぎて何の研究者だかよく分からないことになっていますが、本来の(という言葉が悪ければ、元々の、あるいはもっとも中心となる)研究対象はスウェーデンの作家セルマ・ラーゲルレーヴ(Selma Lagerlöf, 1858-1940)です。
今回のスウェーデン渡航は、セルマ・ラーゲルレーヴ学会とカールスタッド大学の共催シンポジウム「Selma Lagerlöf 2018」に参加するためでした。
プログラム(スウェーデン語)は↓こちら。
https://www.kau.se/kufo/aktiviteter/selma-lagerlof-2018/selma-lagerlof-2018-program
わたしの発表は、初日である18日、全体の討議が終わった後、個別の口頭発表の最初のセッションという、よい時間でした。これが終わってしまえば、あとは人の発表を楽しめますからね。
今回は、慣れない英語での発表だったこと、(日本で開催された国際学会や留学中のゼミ発表の経験はあるものの)海外で発表するのは初めてだったこと、未発表という縛りはなかったことから、日本語で書いた論文「太陽の国、エデンの東―セルマ・ラーゲルレーヴ『ポルトガリエンの皇帝』における三つの層」(『文学』第12巻・第1号(1・2月号)(岩波書店)、2011年1月、pp.215-231)の一部を加筆・修正した形で発表を行いました。
このセッションは『ポルトガリエンの皇帝』という作品を扱った発表ばかりを集めたセッションでした。日本だと(仕方ないのですが)北欧語で書かれた作品の発表ができる機会自体が限られるのに、作品セッションというのは何とも贅沢です。
最初のベテラン研究者の発表の一部がわたしとテーマ的に重なり、自分の発表前に作品紹介・場面照会的な個所を含む話があったのはラッキーでした。
20分の持ち時間を19分40秒~45秒で終わるように練習したのに18分33秒で終わってしまったり、なまりのある北欧語での質問が聞き取れず、うまく答えられなかったのは残念でしたが、当日も、翌日も、発表を聞いた何人かには「面白かった」と言っていただくことができました。
また、10年前にわたしがこの学会に入会したときに秘書をしていた女性がいます。この人は、学会前日にラーゲルレーヴの生家のガイドツアーでたまたま一緒になり(そのときはお互いが会員であることを知らなかった)、わたしのガイドへの質問を印象深く覚えてくれていて、次の日にあった学会でいろいろな人にわたしを紹介してくれました。この方はドイツ語ができることもあり、その後も、スウェーデン語について色々なアドヴァイスをいただきました。
今回、わたしが発表するという理由で遠くから聞きに来てくれたのですが、「スウェーデン語がうまくなった」と褒めていただきました。少しは恩返しができたかな。
写真は学会があった大学と一日目終了後の懇親会場です。最後の二枚は懇親会場の建物の中にあった展示物で、19世紀後半から20世紀前半にかけてのアメリカ移民で使われた箱と、移民の様子を描いた絵です。