さかなのためいき、ねこのあしおと

スウェーデン滞在記。現地時間の水曜日(日本時間の水曜日午後~木曜日午前中)に更新します。

書籍『巨人フィンの物語』刊行のお知らせ

更新が滞り、申し訳ありません。今回の投稿は、書籍刊行のお知らせです。

チラシ作成:中丸麻衣子

 

***書誌情報***

『巨人フィンの物語 北欧・日本 巨人伝承の時空』(三弥井書店、2024)

絵本:ローネ・モーゲンセン文、トード・ニイグレーン絵、中丸禎子訳

解説:中丸禎子

定価:2000円+税

三弥井書店HP内書誌情報:巨人フィンの物語 (miyaishoten.co.jp)

特設ページ:中丸禎子のページ 著作特設ページ (biglobe.ne.jp)

AmazonAmazon.co.jp: 巨人フィンの物語 : 中丸禎子, 中丸禎子, 中丸禎子: 本

楽天楽天ブックス: 巨人フィンの物語 - 中丸禎子 - 9784838234172 : 本 (rakuten.co.jp)

※6月23日現在「在庫切れ」となっていますが、出版社には十分在庫があります。少し日数はかかりますが、入手可能です。

ISBN:978-4838234172

***

 

この本は、ちょっと変わった二部構成です。
前半は、スウェーデンの民話『巨人フィンの物語』の絵本版。民話の舞台であるルンド大聖堂のガイドを長く務めた研究者モーゲンセンによる楽しい再話と、画家ニイグレーンの美しい絵をお楽しみください。
後半は、80頁の解説を書きました。「巨人フィンに会いに行こう」は、基礎情報のほか写真を多数掲載した紀行文です。解説第一部では北欧神話から現在の民話が成立するまでの様々なバージョンをご紹介。解説第二部ではこの北欧民話と東北の民話『大工と鬼六』の意外な関係、第三部ではもとになった北欧神話諫山創進撃の巨人』についてと、日本での展開に触れています。

 

巨人フィンを知ったのは、2018年です。

2018年スウェーデン滞在記(61) ルンド大聖堂と巨人フィンの物語 - さかなのためいき、ねこのあしおと (hatenablog.com)

 

そのときの記事に「数年後くらいにこれに関連した論文を書くかもしれないし、書かないかもしれないので、気長にお待ちください」と書き、まさかの書籍となりました!

わたしの近年の仕事の中では最も楽しかった一冊。ぜひお手に取ってご覧ください。

ナイチンゲール

こちらは、わたしが初めて撮影に成功したナイチンゲールです。撮影に成功…といっても、手前の枝にピントが合ってしまい、鳥はボケています。

なぜそんな写真から始めるかというと、今週はナイチンゲールな一週間だったからです。

6月2日に、この写真が本当にナイチンゲールか確かめようと検索していた時、『ナイチンゲール』という映画(ジェニファー・ケント監督)の存在を知りました。

見てないのに紹介するのは無責任かもですが、ポスターと「私は、あなたのものではない」というキャッチコピーがすごく気に入りました。

映画「ナイチンゲール」公式サイト|3月20日(金)ロードショー (transformer.co.jp)

 

6月3日は、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞したオーストラリアの「先住民文学基金」(Indigenous Literature Foundation)の代表を招いたパネルディスカッションがありました。テーマは「言葉に対する子どもの権利」。

賞の概要はこちら。
Astrid Lindgren Memorial Award (alma.se)

前から気になっていたすてきな建物。建物名は「コンサートと会議(Konsert och Kongress)」です。

なぜこれがナイチンゲールと関係があるかというと、司会を務めたスウェーデン人作家アンネ=マリー・シェルリング(Anne-Marie Körling)さんが、話の導入でリンドグレーン『ボダイジュがかなでるとき』に言及され、タイトルともなっている重要な詩句「わたしのボダイジュはかなでている?わたしのナイチンゲールは歌っている?」を述べ、これをほかの皆さんと一緒に唱和する機会に恵まれたからです。同作については、個人ウェブサイトの紹介をご覧ください。↓

リンドグレーン「ボダイジュがかなでるとき」(中丸禎子のページ・本の紹介) (biglobe.ne.jp)

帰りがけ、たまたま出口付近にシェルリングさんがいらっしゃり、「ありがとうございました。楽しかったです」と話しかけたところ、向こうもわたしのことを聞いてくれたので、外に出るまでの2分くらいでしたが、日本人でスウェーデン文学を研究していること、そのきっかけになったのはリンドグレーンであること、『ボダイジュがかなでるとき』は一番好きな作品であることをお話しできました。同作がかなり昔に日本語に訳されたこともお伝えできました。

わたしはこのエピソードを、言葉が現実とは別の世界を見せる(悪く言えば言葉によって現実から逃れる)ものと受け取っていましたが、シェルリングさんは言葉の力を表すエピソードとして捉えており、また新しい読み方ができるように思いました。

 

6月4日は、ストックホルムのSöderbokhandeln(南書店)で、友達Sigrid Schottenius Cullhedの本『ピロメーラーの変貌』の出版記念パーティがありました。

なぜそれがナイチンゲールと関係あるかというと、この本で扱っているピロメーラーは、ナイチンゲールに返信したとされる人物だからです。オウィディウスの『変身物語』によれば、ピロメーラーは、姉の夫に襲われ、舌を切られて幽閉されます。それでも織物を使って姉に自分の身の上に起こったことを告げ、姉は夫に復讐するため、自分と夫の間に生まれた子どもを殺して夫に食べさせます。夫がそのことに気づき、武器を振り上げたところで三人ともナイチンゲールに変身する…という話です。わたしのスウェーデン語力のせいで、講演会の内容をすべて理解できたわけではないのですが、友達の本は、ピロメーラーが神話やその後の文学の中でどのように描かれてきたか、性暴力・沈黙・創作の在り方の源典としてピロメーラー神話を捉える、というものです。

実は今、この先どういう路線で文学研究をするか悩んでいて、この話を聞いて、「神話の受容と変貌」(文学用語では「アダプテーション」と言います)だったら行けるかもしれないなと思いました。

ナイチンゲールは、小さくて地味な鳥ですが、夕方にきれいな声で鳴きます。アプローチは全く違いますが、そのナイチンゲールを人を喜ばせるきれいな歌を歌う鳥ではなく、自己表現につなげていく三作品(いや、映画は見ていないので違うかもしれませんが)に続けてで会えたという意味で、今週はナイチンゲール週間でした。

メイン記事はここまでですが、今日は写真少なめなので、ストックホルムの写真を何枚か。

最寄り地下鉄

この道を進むと本屋さんがすぐ見えます。

隣りは帽子屋さん

帽子屋さんを通り過ぎ、地下鉄でストックホルム中央駅に向かいます。

ピッピだ!

 

【追記】記事「ウップサラの好きな場所」の「一番好きな居酒屋」外観に写真を追加しました。
ウップサラの好きな場所 - さかなのためいき、ねこのあしおと (hatenablog.com)

市民マラソン大会(献血マラソン@ウップサラ)

今週は、リンネの小道の続きを掲載する予定でしたが、急遽予定を変更して、小道を歩くはずだった日に市民マラソン大会に参加しました!

Blodomloppet 2024 - Årets viktigaste lopp

参加したこちらは「献血ラソン」。Blodは「血」、omは「~の周りに」、loppetは「競技」で、献血を啓蒙するため各都市を巡回している大会です。ウップサラでは5月28日に開催されました。ちなみに、Blodomloppetで「血液の循環」という意味になるそうです。シンボルマークの走る血液ちゃんがかわいい。

レースで履いたシューズ、記念Tシャツ、完走者全員がもらえる走る血液ちゃんメダル。

実はわたしは、長い間ジョギングをしており、全盛期は1日10キロ、週6日走り、フルマラソンも3度完走しました。ただ、近年、色々な事情ですっかり走れなくなり、どうにか復活したいなと思って、今年度の目標の一つを「市民マラソン大会に参加し、短い距離で良いので完走する」にしました。8月にもエントリーしているのですが、前日に知ったこの大会は、スタートの1時間前までエントリーできます。フルマラソンハーフマラソンはない緩い大会。10キロ、5キロ、ジュニア向け2.5キロ、障碍者と同伴者向け1.5~3キロ、好きな時間と場所と方法で参加できる5キロ・10キロというカテゴリーで、かつ、5キロも、「速く走るランナー(30分以内)」「ゆっくり走るがタイムは測定するジョガー」「タイムを計らず歩くウォーカー」に別れていました。

これならいけるかなと思い、5キロ(ジョガー)にエントリー。自分の目標として「歩くより遅くてもいいので、最初から最後まで走る」を設定しました。

会場へはバスで向かいます。バスの中も、スポーツウェアや、大会のTシャツを着た人がたくさんおり、また、バスの窓から自転車や徒歩で会場へ向かう人も見えました。

車窓の風景。わたしの部は18時45分スタートですが、暑そうです!

開場となるIFU arenaが見えてきました。ここでバスを降ります。

事前受付もあるのですが、わたしは前日にエントリーした関係で、会場で記念Tシャツとゼッケンを受け取ります。着替えをし、ウォーミングアップをしたら、カテゴリーごとにスタンバイ。

このようにカテゴリーごとに集まります。こちらは30分以内で走る人向け。

わたしはこちらの「タイム測定あり、30分以上」に並びます。

カテゴリーごとの集団で、スタート地点への移動を待ちます。

移動が始まりました!別のカテゴリーの人たちが向こうでスタンバイしています。スタート時間は、カテゴリーごとに異なります。

スタート地点

走る途中の写真はないのですが(わたしは撮りませんでしたが、撮影はOK)、沿道の人たちが応援してくれて、途中では音楽の演奏もありました。北欧の楽器ニッケルハルパで応援してくれた人もいました。

走る人たちは、おしゃべりしながら楽しく走る人、ベビーカーを押して走る人など楽しむタイプの人もいれば、スタートからすぐに苦しそうになり、歩き始める人もいて、自由な感じでした。抜かしたり抜かされたりしながら走るのが楽しかったのですが、思わずペースが上がってしまい、意外と苦しかったです。しかし、速く走るとゴールにも早く辿り着きます。

ゴール地点

完走メダルのほか、食べ物・飲み物ももらえます。やや熱中症気味になってしまい、この飲み物はすばらしかったです。

この大会は5人グループでまとめて申し込むと景品がもらえることもあってか、グループでの参加者が多かったです。終わった後は会場でピクニックが始まります。

わたしは食べ物や飲み物を用意してこなかったので、帰ることにしました。

20時頃。太陽の角度が独特で、影が長く伸びています。連続写真でお楽しみください。

カワイイ

ここに自転車の設備ができるそうです。日本の会社SHIMANOの名前も。

バス停のゴミ箱。

反対方向のバス停

この路線の途中はすごいです。濃い文字色の3番目以降は、全て思想家・文学者の名前。上から、女性解放運動のフレドリカ・ブレーメル、作家ラーゲルレーヴ、アルムクヴィスト、レーヴァ―ティンと続きます。スウェーデンでは通りにそれぞれ名前がついており、このあたりは偉人シリーズなのですね。

よく働いたので、ずっと気になっていたお店でケバブを買って帰りました。その後、Tシャツを記念撮影しました。


Tシャツの前面


背面


完走メダル。

その日の夜のうちに、運営からメールで結果のお知らせがありました。タイム、順位ともに、当初想定していたよりもすごく良くてご満悦。

今回は、完走できたこと、自分にとって良いタイムが出せたこと、走る自分が好きだなと分かったこと、そして何より、「こんなに走れるんだ」と分かったことが大収穫でした。今後のランに向け、気合が高まりました。

リンネの小道2

前回に続き「リンネの小道」のご紹介ですが、実は、写真の大半が前回と同じ場所での撮影です。ただし、今回は馬の写真がたくさんあります!

もともと、前回の続きを歩くつもりだったのですが、出がけに確認すると地図がない!探しても見つかりません。なくてもリンネの小道自体は表示があるので歩けるのですが、地図にはバス停の場所が書いてあり、帰るとき(時に、怪我などで思ってない場所で帰るとき)に必要です。そこで、前と同じところで地図を取ろうとしたのです。

ところが!「王さまの草原ユリ」シーズンだったためか、地図がなくなっていました。もう一度行ったおかげで、柵がない状態で見れたので良かったのですが、お花を楽しんだので時間はかかってしまい、前回の終着地についた時点で、あと1時間くらいしか歩けなさそうでした(小道自体の時間制限はないのですが、水の残りと自分の体力的に)。で、1時間ほど進もうと思ったのですが、道が分からず(ここはちょっと表示が分かりにくかった)、うろうろしているうちに時間切れ。続きの道を見つけるところまでやって、前回と同じ場所から引き返しました。

ただ、続きの道のところに、牧場があり、馬の写真が撮れました。今回は、そちらを中心にご紹介します。

変なベンチ。前回は人が座ってて写真が撮れませんでした。


三カ所目にしてようやく冊子発見。

前回のゴールです。

ウサギ!これを望遠カメラで撮ったのが、二つ前の投稿のウサギがタンポポと一緒に写っている写真です。

馬を運ぶ車

HÄSTER(馬)と書いてあります。

農場です。

左奥にウップサラ大聖堂が見えています。

農場を後にし、バス停に向かいます。

自転車マークが消えている!

バス停に行くためには、道路の下をくぐるのですが、そのトンネルがホタテ貝のようでおしゃれです。

豪快な飛行機雲が出ていました。

リンネの小道1

ウップサラ観光局の五月上旬のお勧めは「リンネの小道」です。

その時期のお勧め理由である「王様の草原ユリ」の記事はこちら。

王さまの草原ユリ - さかなのためいき、ねこのあしおと (hatenablog.com)

 

上記の記事でも書いた通り、何日かに分けて歩いてみました。実は、1回目と2回目が諸般の事情で同じところを2度歩いたのと、3回目に歩こうと思っていた日に歩けなかったので、まだ完結していません。

この記事では、1回目の小道ツアーをご紹介したいと思います。

授業がない日が続き、最初は旅行に行こうと思っていた5月上旬。色々な事情で旅行に行けなくなりましたが、ずっと研究室と家だけ往復するのもなーと思い、週末はウップサラを堪能することに。観光アプリをみて、美術館に行こうかなと思っていたのですが、「リンネの小道」が出現しており、これだ!となりました。

まだスマホが日本の番号を使っており、Wi-Fiがないところでは使えないので、地図をどうしようかなと思ってピン!ときました。まだこの家に移る前に、ホテルから以前のジョギングコースに行った時の冊子を思い出したのです。2008年にジョギングコースとして走っていた時には気づかなかったのですが、地図が置いてありまして、それを持って帰っていたんですね。

早速取り出して開いてみると・・・

やはり!あのジョギングコースは、「リンネの小道」の最初のあたりだったのです。

コンパクトにたためる地図です。

一日フルに出かけるのは無理だったので、午後の時間帯を使い、小道の入り口まではバスを使うことにしていってきました。

4月の最初に工事中で、迂回の理由となった橋が完成しつつありました。このあたりで地図をもってうろうろしていたら、親切なスウェーデン人が、道を教えてくれました。まだこのあたりは、地図に載っていない場所です。

フィリス川を下って行きます。

これ、ずっと何かわからなかった、というか、意識していなかったのですが、「王さまの草原ユリ」ですね。「リンネの小道」を含むもっと長い道「フィリス川遊歩道」を示します。

「リンネの小道」は、このような標識沿いに進みます。

ジョギングコースのスタート地点です。

ここから左側に行くと「王さまの草原ユリ」の群生地、「リンネの小道」の先に行くのはまっすぐです。まずは群生地に行こうとしたところ、警報音がなって遮断機が下りました。なんだろ!?

橋が・・・

開いていきます!

ガション!

遊覧船が通過していきます。船が通る時は橋が開いて、その間、橋が通行止めになるのですね。

船も行ってしまったので「王さまの草原ユリ」群生地に向かいます。今日は「王さまの草原ユリ」の写真は省略。

小屋の方向を目ざします。

つくしも生えるんだ・・・!

こちらの小屋に行きます。走る時はいつも素通りでしたが、道もあるので小屋まで行ってみることに。

このように鍵がかかっているのですが、開けて入っても良い(出た後は鍵を閉めること)ということで、入ってみました。

木漏れ日(?)がめっちゃええ感じ。

中には説明パネルがいっぱい。

急な階段を上ると2階もあります。2階も窓が開けられるようになっています。

いい景色!

小屋を後にしました。

上から、「王さまの草原」、「リンネの小道」、「街」の標識。初めて「リンネの小道」の方へ行きます。

この先は、鳥が営巣するため、今の時期は入れないそうです。

この遊歩道から、営巣地を見ることができます。

こちらが営巣地。

鳥の観察所兼休憩所。秘密基地っぽいです。

しばらく見えなかった川が見えてきました。また川を下って行きます。

長距離電車が走っていきます。

一度目のウォークはここまで。バスで市内に帰ります。

生き物(望遠カメラ)4月末~5月前半

望遠レンズで撮った動物の写真です。鳥が虫をくわえた写真が含まれています。

(細かい場所の特定を避けるため、)複数日に複数個所で撮った写真を順不同で掲載します。

満開のりんごの花

子どもの頃に、長らく一番好きだった話が、リンドグレーン「五月の夜」(『親指こぞうニルス・カールソン』大塚雄三訳、岩波書店所収)でした。エッペルヴィーケン(りんごの湾)という土地のりんご園で、花が満開の5月に展開される妖精の話。

これを読んで以来、「満開のりんごの花」は、人生で一度は見たいものとなりました。2008年の滞在でも見られましたが、そうすると、人生でももう一度見たいものになりました。今回は庭にりんごの木がある家を借りることができ、堪能しました。

それでは、さまざまな表情の「満開のりんごの花」をお楽しみください!